北朝鮮へ旅行へ行くと泊まることになるのは、平壌市内にある5つ星ホテル・高麗ホテル(または羊角島ホテル)だ。
党大会などのイベント時に日本のマスコミがワイドショーでネタにするのはだいたい高麗ホテルだ。(羊角島ホテルは、スローガンプレートをパクって拘束されて実刑を食らったアメリカ人が出た*1ことでも知られている。)
私が訪朝したときもまた、高麗ホテルに宿泊した。ホテルの設備や内装を見ていこう。
まるで、というかそのまま高級ホテルな内部には何でもアリ
エントランスから見えるのは銀座とか丸の内にあってもおかしくない感じの内装だ。バーもあれば卓球台、パチンコゲームマシーン、マッサージやプール、美容室も備えた複合レジャー施設の様相だった。
朝鮮風屋根のレストランもあり、日本の地方都市の駅チカに入居してそう。
エレベーターのプレートは隠されていたが、HITACHIのロゴがすけて見えていた。
階数表示はべつに16進法なのではなく、単に一の位の右側が欠けていたようだ。
二階には書店や写真屋がある。デジカメの写真を印刷すると30元くらいする(たしか)
ビリヤード台もやたらたくさんある。遊ぶには困らないようだ。あまり遊ばなかったが…
地下のカフェにはSONY製のテレビから流れる抗日ドラマ。これを見てゲラゲラ笑いながら写真を撮ってた日本人の集団を見て服務員同志は何を思っただろうか…。
売店は、写真を撮るや「NO PHOTO!!」って怒られたのでこの程度しか残っていない。何やら見覚えのある薬がたくさん並んでいる。
POKKAのコーヒーやサンガリアの清涼飲料水、キリンラガービールなど日本製の飲み物もたくさんおいてあった。価格は国産の「大同江ビール」などの約2倍。正直、大同江ビールの方が俺好みのものだったので、日本食品が恋しくなることはまずなかった。
居室は二人一部屋。テレビでは「朝鮮中央テレビ」や「NHK WORLD」が視聴できるほか、謎のパズルゲームができる。ベッドサイドのラジオからは朝鮮中央放送が流れる。
モーニングコールは、出てみると「Goodmorning.」て一言挨拶されてブチ切られる仕様。開口一番に挨拶を返してもリアクションはない。機械なのか有人なのかはよくわからなかった。
平壌入りする前後は中国の激安ホテルやユースホステル、寝台車の硬臥などで寝ていたので、ベッドの寝心地はまさに地上の楽園って感じだ。
ランドリーバッグに洗濯物をぶち込んでおくと、翌日洗濯して置いておいてくれる。
お値段もリーズナブル。
部屋によっては、高層階から平壌駅を望むことができる。
宿泊したのは27階。でっかい窓を空けると網戸や格子があるわけではなく、高所恐怖症だったら大発狂しそうな風景が広がっていた。窓を全開にすると、夜の澄んだ平壌の空気や、朝のさわやかな平壌の空気を胸いっぱいに吸い込むことができて爽快だった。くっそ寒かったけど…(零下10℃)
「怪しい伝説」高麗ホテルのでっかい鏡は監視用マジックミラー?
客室内には例外なくデッカイ鏡が壁に埋め込まれている。あまりにもでかくて歪な存在感を放っているだけに、以下のような噂が囁かれている。
ホテルひとつとってみても、なかなか興味深い北朝鮮。また、平壌のホテルといえば、盗聴説、鏡がマジックミラーになって監視されている、といった都市伝説も囁かれている。実際のところ、どうなのだろうか?
この噂はとても有名なので、私も気になっていた。
このように、「けいおん!」を鏡に向けて抗議放送するオタクも存在する。
検証してみた。
「指で触れてみて、鏡面に映った指と自分の指が接触したらマジックミラー*2」という検証方法が訪朝のちょっと前にTwitterで話題になっていたので、試してみた。
そのときの様子が、この一枚である。
結果から言うと、通常の鏡と同じ距離感を保っており、恐らくこれはマジックミラーではないだろう。
そもそも、暗い方から明るいほうが見えるというのがマジックミラーの性質であり、真っ暗にできるこの部屋にマジックミラーが設置されているというのもおかしな話だ。
ただ、鏡のある壁面は、間取り的には隣の部屋との間にある謎の空間であり、隣の部屋もまたこの空間に接するように鏡が設置されている。この空間から何者かがマジックミラーで覗いていることを疑われても、おかしくはないだろう。
あるいは、何らかの要人が特定の部屋に泊められるようになっていて、その特定の部屋のみ、鏡から中を覗けるようになっているのかもしれない。
いくら貧しい北朝鮮とは言え、マジックミラーなどを使わなくとも、監視カメラを埋め込むことはそう難しくないだろうが…。
バーでは「KOREAN VODKA」なるぽしゃけ(お酒)が7元でなみなみと…
二階のバーでは、お酒と軽食を楽しむことができる。なぜかマルちゃんのカップラーメンも置いてある(20元もする)
朝鮮ウォッカなる品目があったので、頼んでみた。7元だしどうせショットグラスだろう…と思うじゃん?
並々と注がれてそれはやってきた。飲めるのかと心配になっていたがこのウォッカ、52度と激強いものだったにもかかわらず、非常に飲みやすくペロッと飲み干してしまった。
翌日、祖国解放戦争勝利記念館の多目的トイレでゲロ吐いて軍人が駆けつけてきたのは記憶に新しい。生きててよかった…。
結束語:一日中高麗ホテルで遊ぶ旅程があってもいいレベル
私は5つ星ホテルなど、生涯に泊まったのはここ高麗ホテルくらいしかない庶民なので、5つ星ホテルがどんなものかというのはイメージが付きにくいが、非常に居心地の良い空間であった。(逆に、私の中の5つ星ホテルの基準はここ高麗ホテルに固定されたのである…。)
次訪朝の機会があったらもう一つの5つ星ホテルの羊角島ホテルや、カラオケのために訪問した解放山ホテルにも宿泊してみたいが、この高麗ホテルにもまだまだ未知の要素が多いので、また来たいものである。
【注釈】