多くの日本国民にとって、北朝鮮に訪れる事は決して難しいことではない。ミサイル問題で国際情勢が緊張する中でも、「金と暇があれば誰でも行ける」と言われているほどである。旅行社の担当者によると、年間で約100人もの日本人が北朝鮮を訪れているという。
しかし、金と暇(と周囲の理解も?)を勝ち取ることがそうそう簡単ではないというのが、実情だ。
訪朝経験者ならば、あるいはそうでなくとも「VRでもいいから平壌の街を歩けたら…」と思うだろう。なんとそんな欲望を叶える動画が、まさかのYoutubeに転がっていた。それも大量にだ。
眼前に広がる平壌の景色
動画を撮影して公開するのはシンガポール人写真家のAbram Pan氏である。『DPRK360』なるプロジェクトを領導し、北朝鮮国内のVR映像撮影に励んでいるようだ。
まずは、1分ほどの映像をご覧に入れよう。平壌にある「朝鮮労働党創建記念塔」を360度撮影したものである。PCよりもスマホで、スマホよりも当然VRグラスで観るのが楽しいかと思う。
目の前に広がる、労働者と知識人と農民の協働を表す巨大なカマ・ハンマー・ペンのモニュメント。これを360°ビューで観ることができる。スマホをぐるぐる回転させながら観ていたら、たった一度訪れただけの現地のひんやりした空気、アスファルトの質感、荘厳なモニュメントの印象が脳裏に蘇ってきた。感涙モノである。
まるでデート?美人ガイドさんと地下鉄に乗り込み…
しかし、DPRK360の威力はこれだけではない。次の映像を観てみよう。
32分もあるので大まかに言うと、ガイドの女性の英語による解説を聴きながら、平壌を走る地下鉄千里馬線を復興駅から凱旋駅まで乗る一部始終が映っている。
駅構内と車内に響き渡る朝鮮音楽、ホームに掲げられた労働新聞を読み込む人民、何もかもが薄暗い感じ…ああ、今私は平壌にいる…そう感じさせる映像だ。得も言われぬほどに素晴らしい。
そして隈なく視点を動かしていると気づくこと……
は…? ガイドさん可愛くないですか!? そう、Pan氏は単身平壌へ乗り込み、この美人ガイド氏のマンツーマンのガイドのもと平壌を巡っているのである。このシチュエーションは、地を割くほどに深遠な嫉妬を禁じ得ない。
なんか、2人で車内でセルフィとか撮りだしてるし。ここでまたブチ切れですよ。山手線にいる高校生カップルかよと……。
逆に言うと、始終このような”ちょっと恋人感のある”北朝鮮ツアーを、VRで追体験できるようになっているのである。ある種の人にとっては、幸福が実現される。端的に言って最高だ。
「恋人気分」はとどまるところを知らず…
極めつけと言っていいのが以下の映像だ。
これはPan氏が前出の美人ガイド氏と平壌の露天でアイスクリームを購入し、2人で食べるというものである。いい加減にしろ!!
このショット、もはやカップルのInstagramのストーリみたいだね。ありえん破壊力が高い。
結束語:北朝鮮ツアーは夢がいっぱい
オタク・ホイホイにしてオタク・キラーだったDPRK360の映像だが、これ以外にも平壌の街を車で撮影したもの(ストリートビューみたいな見え方になる)や、板門店を訪問するものなど、見ても見きれないほどにストックされている。筆者の旅行記に記したような、代表的な観光名所はほぼ網羅されている模様だ。家にいながら北朝鮮を味わうのに、まさに最高のシステムとなっている。
また、この映像集を通した発見としては、この映像集が、北朝鮮ツアーにはこのような体験をすることができる可能性を示唆していることだ。
北朝鮮ツアーは、音楽、鉄道、グルメ、軍事、そして「恋人気分」まで、あらゆる需要を絡め取るのである。