クソゲーならぬクソ映画という愛すべきジャンルがある。B級映画とも呼ばれる。文句無しで下らない、観ていて時間の浪費のように感じるような映画の総称だ。
私はそのようなもので時間を潰すことにある種の快感を覚えている。
今日紹介するのは全て愛すべきクソ映画だ。全部Amazonプライムビデオで見放題になっている。本当に勘弁してくれ。なお、文句無しでネタバレ満載なので、注意されたい。
不倶戴天の敵・アメリカ帝国主義の全領土に白頭の革命精神を!「レッド・ドーン」(2012年)
北朝鮮による侵攻を受け、占領状態にあるアメリカ・ワシントン州が舞台。
北朝鮮軍チョウ司令官に父親を殺されたリア充アメフト高校生ジェドは、友人マッドとともにアメフトチームの名前を冠した武装勢力「ウルヴァリンズ」を結成して蜂起し、北朝鮮軍に立ち向かう…。
英雄的朝鮮人民軍の手加減を知らぬ白頭の戦士たちによる無慈悲な鉄槌でアメリカ全土が火の海になる展開を期待して観たのだが、武器をかっぱらって「北朝鮮軍」と戦うリア充高校生達が、屈強な合衆国海兵隊員を味方につけてTueeeeeするだけで胸糞悪かった。
しかもこの「北朝鮮軍」、やたらと装備が新しい。軍服もまるで中国人民解放軍だ。というか、朝鮮人民軍らしさがどこにも見当たらない。
また、北朝鮮に占領されたアメリカの街に「一心団結」といったハングルのスローガンやポスターが並び、大音量でチョソン音楽が響き渡る・・・といった光景も期待していたものだが、一切描写されていなかった。
観終わった後に調べてみると、どうも当初アメリカを占領するのは中国という設定だったが、大人の事情により北朝鮮に変わった*1とのこと。たしかに「チョウ司令官」とかいうボスキャラは明らかに中国系の名前だし、そもそも役者も中国人だ。ちょっとお粗末すぎない?
オチも秀逸なクソだった。チョウ司令官との銃撃戦はクライマックスとして許せたが、最後に占領軍に対するゲリラ攻撃を繰り返すウルヴァリンズのメンバー達の姿を映し出され、「俺達の戦いはまだまだ続く」みたいなナレーションが入って終わるのだ。打ち切り漫画か?
ゲリラ戦を続けていくうちに、かつてアメリカが戦ったベトコンやシリアのイスラム武装勢力に思いを致す…という筋であったなら、いかにもアメリカの社会風刺って感じで面白かったな、と思った。もちろんそんなシーンは無い。
ちなみに1984年に制作された同名作のリメイクだったらしく、そっちではソビエト・ロシアに占領される話だったようだ。冷戦終わっちゃったもんね、しょうがないね。
君のパンティが世界を救うセカイ系…?「HK/変態仮面」
HK、ブログの趣旨からすると香港の略語のように思われるが、今回のHKは香港ではなく、変態仮面だ。
俳優の小栗旬の尽力によって製作が決定されるも、イケメン小栗旬には主演が許されず、鈴木亮平が主人公を演じることになったという。
パンティを被っているのはもちろん、変態仮面が股間を軸に高速回転したり股間を顔にスタンプして怪人を倒したりする。そりゃ小栗旬には許されなかっただろう。
コロコロコミックのようなノリを実写化してしまう限界感がまさにクソって感じだ。普段は真面目で静かな主人公が、仮面を被ると凶暴になり、そのギャップで悩むというところは「デトロイト・メタル・シティ」に近い。
また、最後には””セカイ系””*2な展開を楽しむことができる。セカイ系な物語類型にあまりにもよく馴染んだ僕達オタクは、このシーンによってパブロフの犬のようにイイハナシダナーと一瞬思わされてしまうからたちが悪い。
幼少の性への目覚めの定番…だが期待はずれ「映画版ふたりエッチ トリプル・ラブ」
小中学生の間で「黄色い教科書」と呼ばれるバイブル「ふたりエッチ」が映画化されたものらしい。じつはろくに原作を知らない…。
ポルノ映画の類ではないので、Amazonで18禁制限が観ることができるようになっているようだが、まあダイレクトな表現は皆無と言っていい。
登場人物女性はやたらセックスアピールの多い、言わば田舎の繁華街で客引きをしているガールズバーの姉ちゃんみたいな格好をしている。それでいて日常系なストーリー展開で、なんだか不自然な感じを覚える。
ちょっとエッチなラブコミなのかと思えば、10年来の片想いだとかいう純愛チックな要素が混ざってきて、話がそこらに散らばる印象を受ける。原作こんなんだっけ?
どんな人がどんな期待を以ってこの映画を観るのか想像がつかないというのが正直なところって感じだ。
何となくムラムラしたい時(大変シチュエーションが限られているが…)にオススメ。
結束語:Amazonプライムビデオは愛すべきクソ映画の隠れ蓑
いかがだっただろうか。このように、Amazonプライムビデオにはちょっと気になるけどレンタルビデオで数百円払って観るのもはばかられるような映画がたくさんある。そしてそのような作品の多くはたいていクソ映画だ。
定額見放題のネット映画配信サービスの功績は、名作映画にアクセスしやすくなったのはもちろんだが、こういった映画を消費する機会が格段に増えたことだろう。
このほか良質なクソ映画があったら、私に教えてほしい。
*1:出典:もはやアメリカは中国に頭が上がらない?リメイク版『若き勇者たち』の敵国、中国から北朝鮮に変更 – シネマトゥデイ
*2:「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する セカイ系 – Wikipedia