※追記・修正あり(2024/07/15 2022/05/16 2021/05/06)
しかし、巨大な中国大陸、どこから上陸してどこからどこまで鉄道旅行を楽しむか、戸惑いますよね。同研究会が作成した路線図を眺めて、イメージを膨らませてから旅程を決めていくのが良いでしょう。
おすすめ列車
旅行客にお勧めなのは次の類型の列車である。
①電車列車(高鉄・動車)
本数が多く、スピードも速いので、都市間移動に最適である。日本よりも運行距離が長いのが特徴で、日帰り圏だけでなく長距離の移動手段でもある。1500kmを超える区間でも1本の電車列車で移動できることが多い。電車列車の時刻は「中国鉄道時刻表」において太字で記載している。
②夜行寝台列車
電車列車の乗車時間が6,7時間を超えてくると、夜行列車に乗った方が、時間効率が良いという場合もある。そうした需要から、電車列車が全国に普及した現在でも、中国全土で夜行列車が多数運転されている。中国では日付をまたぐ客車列車はほとんどすべて寝台車を連結しているので、宿代を浮かせつつ日中の時間をフル活用する夜行寝台列車の旅が気軽にできる。
③夜行寝台電車列車
③夜行寝台電車列車
電車列車と夜行寝台列車の各々の利点を掛け合わせた夢のような列車が登場している。在来線夜行列車だと所要時間が12時間を超えてしまい夜発・朝着のダイヤが組めない長距離区間において、寝台を備えた電車列車を走らせることによって夜発・朝着を実現したものである。主な運転区間は次の通り。
【列車・種別の詳細を知る】Vol.1 どの列車に乗ろう?中国鉄道「列車・座席/寝台」の種類を紹介
2019年1月からは、固定編成の動力集中式電車による新しいタイプの夜行寝台電車列車も運転し始めている。車両形式はCR200Jといい、電車列車の優れた内装と動力集中式の低コストを掛け合わせた列車といえる。最高速度は160km/hで、これは直達特快と同等だが、車両性能が総合的に向上していることを反映して、既存のZ列車より所用時間を短縮している。運賃・料金はZ列車よりやや高めだが、車内設備は従来の客車よりグレードアップしており、快適さが増している。
きっぷの買い方と旅行計画
中国国鉄ではきっぷは基本的に電子化されており、紙のきっぷではなくきっぷの購入情報が存在するのみである。しかし、本章では便宜のためきっぷの購入情報を指して「きっぷ」と称することとする。
事前知識
きっぷは買いにくい?
近年、新線が大量に開業し、列車本数が大幅に増えたことから、需給ギャップは急速に解消しており、繁忙期を除けば、多くの区間は比較的容易にきっぷを入手することができる。中国の鉄道きっぷは入手しにくいという長年の「常識」もあるが、いまは残席が全世界に向けて公開されているので、まずは12306サイト(中国国鉄のきっぷ予約サイト)を開いて実際の混み具合を確かめてほしい。
12306サイト上できっぷの残数などを参照する方法は、下記の図を参考にすると良い。
参考リンク:残席検索(12306.cn)
きっぷは原則全席指定
中国国鉄は原則として全席指定である。満席の際は、無座と呼ばれる立ち席券を、数を限って発売するが、これも乗車列車は指定される。
乗車列車を指定して発売するので、きっぷは、システムが必要な料金を自動的に取りまとめて1枚で発券される。日本で乗車券と特急券を別々に買うのに比べると、この点では、係員と旅客の双方にわかりやすいといえる。
転売防止のため実名制
輸送力が長年不足していた中国国鉄ではきっぷの転売が横行しており、これを根本から防止するために、2012 年から全国的にきっぷが実名制となった。購入時にあらかじめ身分証明書類の情報を入力・印字し、乗車時には旅客・きっぷ・身分証明書類の三者が一致していることが駅入り口でチェックされるというものである。入力・印字する情報が誤っていると乗車できなくなってしまうので、入力内容はよく確認したい。
発券システムはオンライン化されている
発券システムはオンライン化が完了しており、任意の発駅・列車のきっぷをどこでも買うことができる。
きっぷが買いにくい多客期
春節(旧正月)の前15日間と後25日間、夏休み学生の帰校ラッシュ(8月下旬)、国慶節休暇(10月1日)から1週間はきっぷを買いにくい多客期となる。このほか2、3連休として、清明節、メーデー、端午節、中秋節があり、近場の観光地を結ぶ区間を中心に混雑する。
座席・寝台の発売開始の仕方
乗車駅発車14日前から発売が始まり、発売開始時刻は乗車駅によって異なる(12306.cnの予約システムで各駅の発売開始時刻が検索できる)。長距離列車の短距離利用によるロスを防ぐために、短距離のきっぷは乗車日が近づいてから放出される場合がある。あらかじめ12306サイトで乗車日を変えて検索し、発売開始のトレンドを把握しておくとよい。
※現在、コロナ対策のため発売開始は発車14日前とされています。
きっぷの買い方
まず、日本にいる間に、乗車予定区間の混み具合を12306サイトで調べておきたい。もしも、そこまで混み合っていないなら、中国入国後に駅等の窓口で買うのがシンプルである。逆に、到着後の購入では席が無さそうであれば、オンライン予約を試すことになる。
窓口で購入する
きっぷを買う窓口には、駅窓口と街頭窓口とがある。本時刻表の路線図に載っている駅は、旅客乗降所・信号場を除けば、すべてきっぷ売り場が設置されている。これら窓口はオンライン化されており、全国の任意の駅を発駅とするきっぷが買える。なお、これまでは他都市発のきっぷの購入には1枚5元の手数料を要したが、2017年からこの手数料は廃止されており、他都市発のきっぷの購入は当地発のそれとなんら区別が無くなった。
中国語が話せなくても、乗車日・発駅・着駅・希望列車の列車番号・座席・寝台の種類・枚数を記したメモを渡せばよい。「中国鉄道時刻表」の482ページに、きっぷ購入メモを収録しているので活用していただきたい。
もちろん、「一番早い石家荘行きの列車、硬座1枚」といったように、具体的な乗車列車の希望を出さずに購入することもできる。身分証明書番号の入力があるので、パスポートの呈示も忘れずに。
【温かいお知らせ】中国鉄道時刻表482ページに掲載のきっぷ購入メモを大公開!
係員の入力コマンドが記載されているので操作がスムーズ! 窓側・通路側の指定等もできる、万能用紙です。
支払いは現金が使える。機器設置窓口においては、銀聯カードやアリペイ(支付宝)、WeChatペイ(微信支付)での支払いもできるが、海外クレジットカードでの支払いはできない。
12306サイトには街頭窓口の一覧が掲載されているので活用していただきたい。
【参考リンク】
※ 残席検索ページ – 12306.cn
※ 街頭窓口一覧表 – 12306.cn
中国語で街頭窓口を検索する時のキーワードは「火车票代售处(ピンイン:huŏ chē piào dài shòu chŭ)」である。
自動券売機で購入する
自動券売機は残念ながら身分証明書類として「二代居民身分証」しか使えず、外国人は購入手続きに進めない。ただし、空席検索端末としてはおおいに使えるので、窓口に並ぶ前に活用したい。
一部大駅ではパスポートを読み込める自動券売機も導入され始めており、これは外国人でもきっぷを購入することができる。
インターネットで購入する
12306サイトを利用することで、日本からでもきっぷが購入可能である。12306.cnからメールアドレスとパスポート情報でアカウントが作成でき、クレジットカードで決済が可能である。
後述するように、ほとんどの区間においてきっぷの受け取りは必要なく、購入時に使用したパスポートを呈示することで直接乗車できる。
乗りたい列車が満席のときは…
満席の列車でも、短距離だと空席がある場合がある。この場合、短距離できっぷを買っておき、車内で乗り越し精算することで目的地へ向かうことが可能である。乗り越し区間は立ち席となる。
マイナーな地点間を結ぶ列車は空いていることが多いので、別の列車と組み合わせて利用すると繁忙期でも移動できることが多い。
立ち席券(無座)しか手に入らなかった場合でも、必ず席が無いわけではない。列車によっては駅への割り当てなど様々な背景で実際には席を売り切っていないこともあるし、同じ理由で寝台が余っており、車内で格上げできる場合もある。いずれも列車によるし、早い者勝ちなので安易な期待は禁物である。
乗り換えについて
中国では多種多様な経路・区間の列車が走っているとはいえ、行先や時間によっては乗り換えを要する行程を組むこともあるだろう。
乗り換えでお勧めしたい方法は、乗る予定のすべての列車のきっぷを乗換駅で区切って、あらかじめ買っておくものである。
2017年10月から、それまで他地域発のきっぷを買ったり引き換えたりする場合に収受していた5元の手数料が必要なくなったので、全行程のきっぷをあらかじめ確保しておくことを妨げる要因が一切なくなった。
中国国鉄では2016年から乗り換えを駅の業務として改めて位置付けたので、主要駅では、次の乗車列車のきっぷを所持している場合に、駅を出ずに待合室に入れてくれる運用が行われている。「快捷換乘」の表示に従ってすすむか、きっぷの購入画面を見せて係員に尋ねたい。
乗り換えに必要な時間は一般に15分は見ておきたい。
列車の遅れ
乗り換えを考える際などに気になるのが列車の遅れだが、電車列車については平常時はあまり遅れることは無い。客車列車もかなり正確に運転は行われているが、時折遅延が発生するので、代替の効かない乗り換えや帰国のフライトへの接続は余裕を持ちたい。
列車の遅れによる不接続
列車遅延により乗り換えができなくなった場合は、以降のきっぷについて、無手数料で払いもどしてくれる。
旅客営業の主なきまり
「中国鉄道時刻表」の巻末430ページから完全版の「中国国鉄の営業案内」を掲載しているが、ここでは基本的項目をごく簡単に紹介する。払い戻し手数料など具体的な事項は「中国鉄道時刻表」をご覧いただきたい。
きっぷの変更
発車までに1回だけ指定変更が可能である(乗車都市・降車都市は変えられない)。発車48時間前までなら降車都市も変更できる。発車48時間前以降は、乗車日をもとの乗車日の次の日以降にする変更はできなくなる。
差額が返金される場合は、手数料が差し引かれる。
きっぷの払い戻し
発車までに払い戻すことができる。カード等で購入したきっぷの場合、払い戻し金額は購入時に使用したカード等に返金される。手数料が差し引かれる。
途中駅からの乗車
券面の途中駅から指定列車に乗車することは可能である。未乗区間は払いもどされない。
途中下車
下車前途無効である。単に途中駅で下車・出場することは可能だが、きっぷの残りの区間は無効となるということである。
乗り越し
最遠で乗車中の列車の終点駅までに限って乗り越しが可能である。区間運賃・料金の収受となり、寝台では起算キロの関係でかなり高くなるので注意されたい(乗り越し区間は硬座にしてもらうのが良い)。
座席・寝台の変更
乗車後でも、空席がある場合に差額を支払うことで上級の座席・寝台に変更できる。乗車列車の列車長に申し出る。下級に変更することも規則上は可能だが、差額は払い戻されない。
乗り遅れた場合
乗り遅れた場合でも同じ区間を走る当日中の後続列車に空席がある場合に変更することができる。長距離列車では後続列車が存在しないこともあるし、すでに変更したきっぷはこの取り扱いの対象外となるため、やはり乗り遅れないに越したことはない。
この規則は覚えておくととても便利です。旅客都合で乗り遅れた列車の振替が無料で出来る鉄道は珍しいですよね。ただし当日の後続列車に空席がないパターンが少なくない(杭州→上海のような中距離の都市間移動は特に…)ので、要注意です。
きっぷを紛失した場合
きっぷを紛失した場合でも再発行が可能である。詳しくは中国国鉄の営業案内(「中国鉄道時刻表」438ページ(「中国鉄道時刻表」438ページ))をご覧いただきたい。
手荷物
本時刻表で駅名左側の営業列が無印の駅では、手荷物を取り扱っている。
電子化されたきっぷの場合
電子化されたきっぷ(後述)の乗車変更(乗車前のきっぷの指定変更)・払い戻しも、紙のきっぷと規定は変わらない。インターネットで購入したきっぷはインターネット上で25分前まで手続きができる(それ以降は駅窓口での手続きとなり、手続き方法は駅窓口で購入したきっぷと同様)。ただし、紙の領収書を受け取っている場合は駅窓口での手続きとなるので注意されたい。電子化されたきっぷを駅窓口で購入した場合、変更手続きは全国任意の駅の窓口で行うこととなり、この際は予約番号とパスポートを呈示する。もし購入控えを持っていれば、それを呈示すると手続きが早いだろう。
運賃のしくみ
2007年に運転を開始した電車列車は新しい運賃のしくみを導入しているが、それ以前から走っている客車列車に関しては、いまなお、対キロ制の運賃・料金を必要に応じて積み立てる方式をとっており、日本の運賃制度とよく似ている。
たとえば客車列車で新空調の普快の硬臥に乗車する場合は、硬座運賃、普快料金、硬臥料金、空調料金が必要となり、さらにそれぞれ新空調の割り増し料率をかける、というように計算する。遠距離運賃は6段階にわたって最大50%まで逓減するので、長距離移動が優遇されている。その代わり、短距離は道路交通に移譲する政策をとっていることから、各運賃・料金の起算キロ程が高く、短距離では割高になる。
客車列車の運賃・料金は1995年から値上げされておらず、総体的に見れば極めて安価である。
電車列車も、二等座運賃でみると並行する高速バスより安いことが多く、決して高価ではない。ただし、電車列車の運賃は遠距離逓減をほとんどしないので、長距離になると割高感が増し、空の便の割引チケットとあまり変わらなくなることもある。
中国の鉄道きっぷの購入は一見敷居が高いようですが、何度か購入しているうちに逆に便利に感じるようになったりします(経験談)。この記事を参考にすれば、中国での移動の自由度がかなり高まること間違いなしです。
まずは路線図と時刻表を眺めながら12306サイトで列車を探してみると、乗ってみたい列車が見つかるかも!?
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中国の時刻表は列車単位で記載されていて、乗り換えを計画することが難しい形式になっています。日本の鉄道時刻表のように、路線ごとに時刻表が掲載されていればいいのに……という日本の鉄道旅行愛好家に、「中国鉄道時刻表」がピッタリです!
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【目次】「中国鉄道旅行ガイド」で10万kmを乗りこなす
◆ 「中国鉄道旅行ガイド」で10万kmを乗りこなす(連載トップページ)
◆ Vol.1 どの列車に乗ろう?中国鉄道「列車・座席/寝台」の種類を紹介
◆ Vol.2 ネットも便利!中国鉄道「きっぷ購入法と小ワザ」徹底解説
◆ Vol.3 中国鉄道でどう過ごす?乗車から車内の過ごし方アレコレ
◆ Vol.4 中国の鉄道は本当に安全?データに基づくファクトチェック
◆ 当連載は、中国時刻研究会より「中国鉄道旅行ガイド」の本文および各種画像の提供を受け、kaeritai.asiaがWeb記事として編集を施したものです。
画像提供:中国鉄道時刻研究会
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