中国の鉄道は本当に安全?データに基づくファクトチェック│連載「中国鉄道旅行ガイド」Vol.4

中国の鉄道は本当に安全?データに基づくファクトチェック│連載「中国鉄道旅行ガイド」Vol.4

ふどあ(編集長)
ふどあ(編集長)
中国鉄道時刻研究会が寄稿する特集:「中国鉄道旅行ガイド」で10万kmを乗りこなす第四弾です。今回は、中国の鉄道といえばよく話題になる“安全性”について、中国鉄道時刻研究会による調査結果を紹介します。さらに、中国鉄道に関するネット上の情報に対するファクトチェックも記述されています。

過去には高速鉄道での大きな事故が日本のメディアでも大きく話題になりました。どんなに魅力がある鉄道でも、不安が拭えない方もいると思います。実際のところ、安全性はどれくらいで、それは日本の鉄道と比較するとどうなのか? 非常に読み応えのある内容になっています!

データで見る中国鉄道の安全性

中国の鉄道というと、2011年の高速鉄道事故の印象が強い方もいるかもしれません。ただ、その後も中国の鉄道当局は安全を最優先に設備やシステムの改修などを進めており、中国の鉄道は安心して乗車できます。まず、具体的なデータで見てみます。

中国の国家鉄路局(鉄道事業の規制・監督機関)が発表した2017年分の鉄道安全レポートによると、中国ではこの1年間、鉄道有責の旅客死亡はゼロでした。また、踏切事故などの死者数は898人でしたが、これも2010年以降5割近く減少しており、立体交差化による踏切の除却などの施策が奏功していることを示しています。

参考までに同じ年の日本の交通安全白書の同様の数字を見ると、おなじく鉄道有責の旅客死亡はゼロ、踏切事故などの死者数は287人でした。中国の方が日本の約6倍の長さの路線網を有していますのでそれも加味すると、日本と中国の鉄道の事故死者数はおおむね同じレベルにあるといってよさそうです。

中国の鉄道事故死者数が約900人であることを取り上げて、安全上課題があると論じた日本の報道もありましたが、死者数の大半は踏切事故や線路内人立ち入りに起因する事故であることを無視しており、あまり適当な評価とは言えません。

2017年に重大事故は発生しなかった。そのため鉄道事故死亡者数は前年比3.9%減少した。しかしその対象となる2016年の数字は恐ろしい。なんと932人である。

中国の鉄道、2017年は順調な成長も死亡事故は依然、多発 (高野悠介) – ZUU online

以上の通り、これらのデータをみる限り、日本と同じ感覚で安心して乗車できるでしょう。とはいえ海外ではより一層、万一の事態に備えなければなりませんから、海外旅行保険の加入は必須です。中国国鉄でも乗客向けの旅行保険を提供しており、きっぷ購入時や乗車前に12306サイトや駅窓口で加入することができます。

中国の鉄道安全対策

中国の鉄道の安全対策も簡単に紹介します。

まず、中国の鉄道では全列車に自動停止装置がついています。さらに、日本の地方線区では信号機のある場所でのみ信号無視や速度超過をチェックするシステムになっていることが多いですが、中国では在来線含むほぼ全路線について「連続して速度超過をチェックし、制限を超えた場合は自動でブレーキを掛ける」という仕組みになっています。カーブや分岐器の制限速度がすべて運転室の装置に記憶されており、運転士はその機械が生成する運転パターンを超える速度は出せないようになっています。簡単に言えば、今の中国では、福知山線脱線事故のようなスピード超過が原因の事故はほとんど起こらない仕組みになっているということです。

安全管理も厳格に行われています。全運転室に録画・録音装置がついており、運転士は指差喚呼をしているかチェックされています。運転記録装置や無線交信の録音装置もついています。中国の運転士の執務風景については、下記の動画が参考になります。なんでも指で差して声を出して確認するのは日本の鉄道と同じです。

【铁路】武汉铁路局火车司机标准化操作教学视频 – bilibili

途中駅でも人が列車の安全に目を光らせています。中国では長距離列車・貨物列車が多いこともあり、車両トラブルは広域に影響が広がりかねません。そのため、運行途中のトラブル未然防止には一層の注意が払われており、全駅で助役がホームに立ち、すべての通過列車を肉眼で見守っています。おもな役割は、標識灯や台車にトラブルが無いか、貨物列車の荷崩れが起きていないかを監視し、必要があればその場で列車を止めて対応することです。

駅員がすべての列車を見守る

鉄道死亡事故や脱線事故の原因として無視できない存在である「踏切」についても、立体交差化が強力に進められています。時速160km以上の列車が走行する幹線では、踏切はすべて立体交差化されました。2014年当時の数字で、中国全土の踏切は、鉄道100kmあたり7.3箇所しかありません。現在ではさらに減っていると思われます。

中国では踏切は珍しい存在

中国では、ホームをうろついていると駅員から早く乗車するか出場するよう声を掛けられることがあります。これも、万一人が線路内に立ち入ってダイヤ乱れなどを起こすと、駅の管理責任が厳しく問われるため、その裏返しで旅客の動きに神経質になっているものといえます。

駅や列車の係員は口うるさく旅客の行動を制限しようとすることがありますが、基本的には旅客が万一にも怪我をしないようにという観点からのものですので、なるべく彼ら彼女らに面倒を掛けないように心がけましょう。

列車とホームを見守る係員

中国鉄道「ネット情報」ファクトチェック

連結作業を行う鉄道員

ついでに、中国の鉄道利用に関するネット上の常識をファクトチェックしてみましょう。

実際のところ、ネット上の旅行会社やトラベルメディアが公開している中国鉄道乗り方案内は、みなさんよく調べられているのですが、基本的に執筆者の経験の範囲内で書かれているので、ほぼ必ずと言っていいほど違っていることがあります。

中国鉄道時刻表・kaeritai.asiaに掲載の『中国鉄道旅行ガイド』は、中国国鉄の膨大な規則や通知を分析し、現地の鉄道関係者の知恵も借り、そのうえで中国のあらゆる地域を訪ね回った編集部員の経験を総合して丁寧・確実に執筆されたものですので、ぜひこちらを第一にご参照いただきたいと思います。

専門的な内容は「中国鉄道時刻表」に掲載していますので、お買い求めになって是非ご覧ください。それでも不明な点はぜひご意見をお寄せください。

ケース1:食堂車でも温かい食事はとれる

食堂車:一等席、ビジネスクラス、ファーストクラスではミニマフィンやパン、お菓子といった軽食が無料です。また食堂車(たいてい5号車)で食事をしたり、車内販売でお弁当(できたてホカホカではなく、味もいまいちです)を購入することも可能です。列車の種類により多少異なります。一般的に注文を受けてから作ります。高速鉄道の食堂車では一皿30~50人民元くらいです。またお弁当は1つ15~45人民元です。普通車では注文を受けてから作るシステムはありません。たいていの場合、果物やカップヌードル、おせんべい、飲み物などを持って乗ります。多くの駅ではマクドナルドやケンタッキーが近くにあります。液体の食べ物や飲み物、ハンバーガーのソースが保安検査中にこぼれたりしないように注意してください。

「中国列車の利用方法|中国新幹線の乗り方」 – アラチャイナ(AraChina)

食堂車は基本的に注文を受けてその場でシェフがコンロで調理します。

ケース2:駅の窓口営業時間は一定ではない

 準備の段階でチケットも忘れず用意しましょう。
ギリギリではなく少なくとも出発の1時間前までに紙チケットを受け取ってください。
駅の窓口営業時間(一般):8:00~22:00
チケット代理店では受け取ることはできません。
駅によっては駅に入る前またはチケットを受け取る前にセキュリティ・チェックがあります。駅の入り口ではX線検査があり、場合によってはパスポートかチケットの提示を求められます。

「中国列車の利用方法|中国新幹線の乗り方」 – アラチャイナ(AraChina)

初列車から終列車まで窓口は営業しています。深夜も発着のある駅では24時間営業も普通です。地方のローカル駅では、列車の発着に合わせて断続的な営業になっていることがあります。

ケース3:G列車の最高速度は350km

G列車(高鉄)とD列車(動車)は共にCRH鉄道(中国高速鉄道)を利用しています。G列車は現在、中国では最も速い列車で、時速が250~400 km/hにも達し、運賃も最も高いです。

「中国の列車種類|中国の列車座席の種類」 – アラチャイナ(AraChina)

G列車は400km/h運転はしていません。最高350km/hです。

ケース4:他地域発着のきっぷ発行手数料は廃止された

中国の高速鉄道(新幹線)を利用して、中国国内の複数の都市を旅行する場合には、予約サイトによっては乗車券を一括で受け取ることも出来ます。その際には手数料(1枚5元)が必要です。乗車券販売代理所でも受け取ることが出来ますがその際には手数料が必要になります。各サイトにより予約方法や受取り方法が異なるので確認が必要です。

「中国の高速鉄道(新幹線)の乗り方・予約方法まとめ!注意点も紹介!」 –  TRAVEL STAR

2017年10月以前の情報です。現在は、駅窓口で他地域の乗車券を受け取っても手数料はかかりません。

ケース5:駅・街頭窓口での鉄道乗車券の発売開始は27日前から

中国の高速鉄道(新幹線)を利用して旅行する場合、乗車券は希望の乗車日58日前より中国国内の鉄道駅または乗車券代理販売所で購入することが出来ます。乗車券を購入する場合は、パスポートなどの身分証明書(有効なもの)が必要です。中国の鉄道駅の窓口は24時間営業です。乗車券販売代理所の営業時間は9時〜17時になります。

「中国の高速鉄道(新幹線)の乗り方・予約方法まとめ!注意点も紹介!」 –  TRAVEL STAR

27日前から駅・街頭窓口での発売が始まります。

ケース6:乗車券の変更は1回のみ

紙の乗車券を発券済みの場合、紙の乗車券と予約に利用した身分証明書の原本を用意の上、鉄道駅の変更窓口(改签窗口)でお手続きください。初回の変更に限り、手数料はかかりません。

「列車チケット(乗車券)の変更・キャンセルについて」 – トリップドットコム

変更はそもそも1回しかできません。また、差額払い戻しが生じる場合はそこから手数料が差し引かれます。

ケース7:客車列車内はデッキを除いて全車禁煙、「普通客車」を除き空調完備

硬座: 中国の列車の硬座は、実は「硬い」わけではありません。ですが、座席パッドは薄く、通常、車両は非常に混み合っています。 車両は喫煙可で、エアコンは付いていません。硬座は非常に安価ですので、短距離の移動には良いですが、長距離の移動には快適さの面でお勧めしません。

「中国の高鉄・列車&座席の選び方」 – トリップドットコム

車内は禁煙(デッキに限り喫煙可)で、エアコンはついています(普通客車を除く)。

ふどあ(編集長)
ふどあ(編集長)

中国鉄道の安全性について、データを基に見てきました。中国での鉄道旅行が、日本で鉄道に乗るのと同じ程度に安全だということがわかるのは、非常に心強いことと思います。

また、鉄道に関する規則や通知の原文を確認して反映している日本語のソースは貴重なので、「中国鉄道時刻表」と「中国鉄道旅行ガイド」は中国鉄道を深く知りたい人にとっても、ちょっと乗ってみたい人にとっても有益です。ぜひあなたの鉄道の旅に役立ててみて下さい。

■中国鉄道時刻研究会「中国鉄道時刻表」のご案内

中国の時刻表は列車単位で記載されていて、乗り換えを計画することが難しい形式になっています。日本の鉄道時刻表のように、路線ごとに時刻表が掲載されていればいいのに……という日本の鉄道旅行愛好家に、「中国鉄道時刻表」がピッタリです!

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「中国鉄道旅行ガイド」も収録されており、自由自在で楽しい鉄道旅行のお供として必携の一冊。編集長もこの時刻表が手放せません。購入はこちら!

 

【目次】「中国鉄道旅行ガイド」で10万kmを乗りこなす

「中国鉄道旅行ガイド」で10万kmを乗りこなす(連載トップページ)

Vol.1 どの列車に乗ろう?中国鉄道「列車・座席/寝台」の種類を紹介

Vol.2 ネットも便利!中国鉄道「きっぷ購入法と小ワザ」徹底解説

Vol.3 中国鉄道でどう過ごす?乗車から車内の過ごし方アレコレ

◆ Vol.4 中国の鉄道は本当に安全?データに基づくファクトチェック

Vol.5 中国国鉄の「Eチケット」完全解説

◆ 当連載は、中国時刻研究会より「中国鉄道旅行ガイド」の本文および各種画像の提供を受け、kaeritai.asiaがWeb記事として編集を施したものです。

画像提供:中国鉄道時刻研究会

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