※追記・修正あり(2024/07/15 2022/05/16 2021/05/06)
中国の駅はやけに広くて、乗車までの流れも日本とは違います。この記事を読みながらシミュレーションしておけば、実際に駅に着いてから迷って慌てることもなくなり安心です!
乗車手続き
駅に向かう
同じ都市にターミナル駅が複数ある場合は、別の駅に間違えていかないように気を付ける。また、国鉄の駅名と市内交通の駅名が異なっていることが多いため、これも注意が必要だ。道路交通で向かう場合は渋滞に備えて十分にゆとりをもって行動したい。
きっぷを購入する/受け取る
ほとんどの列車はきっぷを受け取らずに乗車可能
2020年から、すべての電車列車と、ほとんどの客車列車において、きっぷの電子化が行われ、紙のきっぷを受け取らずに、きっぷ購入時に登録した身分証明書類(外国人はパスポート)の呈示で乗車できるようになった。
これまで、自動券売機の大半がパスポートに対応していなかったために、外国人が中国できっぷを受け取るには有人窓口に並ぶ必要があった。きっぷ受け取りにかかる時間が読めず、乗車リードタイムを大きく引き伸ばしていた。きっぷの電子化により、あらかじめきっぷをオンラインで購入した場合は、きっぷの受け取りが必要なくなった。このため、乗車手順は本人確認・荷物検査・改札だけとなり、駅が空いていれば数分で入口から改札口までたどり着けるようになるだろう(駅にはゆとりをもってお越しいただきたい)。
一方、2020年初頭に編集委員会メンバーが複数駅で試行した際は、一筋縄に行かない場合があったので、以下においてはそうした実際の運用も含めて紹介する。
客車列車で、無人の乗降所などきっぷの電子化未対応の駅が介在する場合はきっぷの受け取りが必要になる。旅行者が該当する場合はほとんど無いが、その場合はきっぷ購入時に受け取りが必要である旨の案内がされる。
駅できっぷを買う場合
あらかじめオンラインできっぷを購入していない場合は、駅の「售票处」(出札口)の窓口に行き、きっぷを購入する。この時、乗車列車がきっぷの電子化の対象である場合は、紙のきっぷは発行されず、購入情報がシステムに記録される。
乗車時は身分証明書類(外国人はパスポート)を使用する。また、きっぷの代わりに、購入控えを受け取ることができる。オンラインで購入した場合と違って他に購入情報を確認するものが無いので、その場でもらえる購入控えを携帯することを推奨する。
きっぷ売り場は、近年急速にインターネット予約と自動券売機の利用が普及したため行列は解消しつつあるが、窓口の数量も絞られて結局長い列ができていることもあるので、なるべく早めに向かうにこしたことはない。
なお、軍人や学生優先窓口は列が短いことがあるが、多くの場合は一般旅客の取り扱いも行っているので、こうした列には並んでおいた方が良い。急客窓口や値班主任窓口も人が少ないので、外国人であることも味方にして、活用していきたい。複数人で旅行している場合はいくつかの列に分散して並んでおくのも手である。もっとも、中国の出札は一般に手際が良いので、予想よりも速く列が進むことが多いだろう。各窓口の営業時間は頭上や窓口脇に掲示してあるので、並んでいる途中に窓口終了に遭ってしまわないよう、確認しておきたい。
なお、大駅では発車十数分前(駅によって決まっており窓口等に公示されている)に当該列車の出札を終了するので気を付けたい。オンラインで購入したきっぷの受け取りにはこの制限が無いことが多い(発車後でも領収書としてきっぷを受け取ることができる)。ゆとりある入場のために、きっぷは遅くとも発車20分前には受け取っておきたい。
連絡先登録
きっぷ購入時に一人ずつ電話番号を登録することが求められている。オンライン購入の場合はアカウント情報に登録していればよい。子ども・高齢者・外国人などで中国の携帯電話番号を持っていない場合は、知人の携帯電話番号や自分のメールアドレスでよい。
駅舎に入る
中国では駅舎に入る際にきっぷの購入情報・身分証明書類の確認と安全検査が行われる。
「进站口」から駅舎に入る。このとき、有人通路の係員にパスポートを呈示して確認を受ける。このとき、パスポートをシステムに読み込ませて乗車情報を中央サーバーから呼び出すのが本則だが、読み込みがうまくいかない場合があり、この場合はスマホに表示した購入情報または購入控えを呈示して確認してもらうのが良い。これが済むと改札までパスポートは必要なくなるので、一旦立ち止まって、大切にしまっておきたい。
次に安全検査を受ける。すべての荷物をX線検査装置に通し、同時に係員によるボディチェックを受ける。安全検査と言っても、空の便とはレベルや目的が大きく異なるので、通過速度はかなり速い。金属を体から外す必要はないし、液体やノートパソコンを荷物に入れたままにしていても問題ないのは当然である。
なお、政治的に重要な時期・行先・地域になると、にわかに検査が厳しくなり、飲料の試飲などが求められることもある。また、北京行き列車などでは、乗車前に再度検査が行われることがある(二次安検)。
待合室
安全検査を出てきたところにある電光掲示板を見て、乗車列車の待合・改札地点を把握し、そこに向かう。多くの場合、手元のきっぷの右上にも記載してある。
大駅では駅舎内で売店やファーストフード店・レストランが営業している。
一部の大駅では商務座や軟席利用者のための専用待合スペースを用意しており、優先改札を行っている。
改札
改札は列車別に行われる。おおむね発車15分前から始まることが多い。改札は発車3~5分前(駅によって決まっており待合室に公示されている)に打ち切られるので、ゆとりをもって通過したい。
改札口では、国鉄の公式情報によれば、ICチップ入りパスポートは自動改札機にタッチすることで通過可能である。しかし、実際には何らかの理由で通過できない場合もあるようなので、この場合は有人改札に回る。また、ICチップの入っていないパスポートも有人改札に回る。有人改札では、パスポートをシステムに読み込ませて乗車情報を中央サーバーから呼び出すのが本則だが、読み込みがうまくいかない場合があり、この場合はスマホに表示した購入情報または購入控えを呈示して確認してもらうのが良い。
これらの箇所で、結局はスマホで表示できる購入情報(12306アプリ、WeChatに来た12306からの購入通知、 Trip.comアプリ等)または購入控えが必要になる場合があるので、駅窓口できっぷ(Eチケット)を購入した場合は購入控えを受け取って携帯しておいた方がよい。
改札を通過して、ホームから列車に乗る際は、自分の号車・座席番号を把握する必要がある。このとき、手元に紙のきっぷは無いので、スマホに表示した購入情報または購入控えで確認することとなる。
車内で検札が行われる場合は、パスポートを呈示すればよい。係員が、きっぷ購入情報があることを携帯端末で確認する。
駅を出るときも、改札口と同様である。
紙の領収書は乗車後の受け取りがおすすめ
きっぷが電子化された一方、券売機や駅窓口で身分証明書類と予約番号を示すことで、紙の領収書を1度だけ受け取ることができる。中国では領収書は任意に出せるものではなく、発行者の売上額・受領者の必要経費とデータ的に連結しているので、乗車変更や払い戻し等の際には領収書の返却が必要になる。紙の領収書を受け取ってしまうと、紙のきっぷと同じような扱いになってしまい、きっぷの電子化のメリットがほとんどなくなってしまう。
紙の領収書は、乗車前のみならず、乗車後30日間でも任意の駅窓口・自動券売機(パスポート非対応機が多い)で受け取れる。紙の領収書は乗車後に受け取ることを強くおすすめしたい。紙の領収書は紙のきっぷと同じ様式であり、記念に手元に置いておくのにもよいだろう。
乗車前に駅で利用できるサービス
荷物一時預かり
大駅では駅前広場の売店等で荷物の一時預かり(寄存)を行っており、乗車まで時間がある場合に活用できる。閉店時間をよく確認しておきたい。
赤帽
一部の大駅では赤帽サービスがあり、列車まで荷物を運んでくれるほか、優先改札もセットとなっていることが多い。
車内での過ごし方
荷物置き場
電車列車では、棚や車端の荷物置き場を使える。
客車列車では、棚や座席の下、寝台の下を使える。軟臥やセミコンパートメント仕様の硬臥は、通路の天井裏が大きな荷物スペースになっており、室内から荷物を上げ下ろしする。
車内販売
ローカル列車も含めてほとんどの列車に車内販売が乗車している。列車によるが、主なメニューは次の通り。ビール、白酒、ジュース、水、ヒマワリの種、スナック菓子、おつまみ(ソーセージ、肉の干物、うずら卵、干し豆腐等)、カップラーメン、たばこ、ティッシュ、トランプ。
電車列車では上記に加えてコーヒーの販売があることも多い。逆に、電車列車は車内禁煙のため、たばこの販売は無い。
長距離列車では、充電済みのモバイルバッテリーやアメニティグッズ、スリッパ、雑誌などの販売が加わることがある。
その他、列車により、増収策の一環で雑貨の販売がある場合がある。
弁当の販売
電車列車ではレトルト弁当の販売を行っている。食事時間帯になると係員が注文を取りに回るので、この時に注文すると、ビュッフェ車で加熱した弁当を座席まで届けてくれる。価格帯は15元~80元まで幅広い。
このほか、電車列車では、12306サイト/アプリを用いて出前を頼むサービスがある。取り扱い駅発車1時間前までにオンラインでメニューを見ながら注文すると、駅の飲食店で調理された出来立ての食事が座席まで出前されるというものである。12306サイト/アプリは中国の携帯電話番号が無ければ使えないが、もしアカウントを持っていたらぜひ活用したいサービスだ。
客車列車では、食堂車を連結した列車の多くで、食堂車で調理した出来立ての弁当が販売される。価格帯は15~30 元。
食堂車
電車列車の多くはビュッフェカーを連結しており、レンジ調理の簡単な食事を提供している。
客車列車のうち夜間走行する長距離列車の多くには食堂車が連結されており、その場で調理した出来たての食事を提供している。一部の列車はレンジ調理の食事となっている。プレートに盛り付けた定食のこともあれば、料理単品注文のこともある。価格帯は市中の大衆食堂の2~3倍で、料理一皿が30~50元、定食が50元程度となる。
食堂車の営業時間は比較的短いので、利用前に係員に確認しておきたい。
鉄路12306アプリで、各列車の食堂車の有無とメニューを事前に確かめることができる。鉄路12306アプリの食事デリバリー検索画面([餐饮・特产])を開き、乗車日と列車番号を入力し、さらに乗車駅(単に調べたい場合は始発駅)を選択すると、その列車・乗車区間で利用可能な食事デリバリーの供給店舗が表示される。その中に「○○客運段[客运段]」(他の組織名の場合あり)や「列車自営[列车自营]」とある場合、それは当該列車の食堂車を指している。アプリ画面でさらにタップすると、食堂車のメニューが表示される(注文も可能)(デリバリー可能なメニューのみ表示されている場合がある)。
食事時間帯以外の食堂車では、実態としては立ち席客への座席の販売なのだが、喫茶営業をしていることもある。
途中停車駅と駅ホーム販売
電車列車では、停車時間が短いため下車客以外はホームに降りないよう呼びかけられている。客車列車では、十分な停車時間がある場合にホームに降りて散歩することができる。発車時刻より前に乗降扱いが早じまいしてしまうこともあるので、この時は最寄りの号車に乗車する。
大駅ではホームに売店や移動販売車があり、車内販売と同じような物品や出来立ての弁当、当地の名物を売っていることがある。短い停車時間の中で買い物をすることになるので、慌てないようにしたい。
給湯
中国人は熱い茶を好むため、すべての列車に給湯設備がついており、無料でお湯を使うことができる。カップラーメンを調理できるほか、蓋つきのコップと茶葉を用意しておくと手軽にお茶が飲める。
普通客車では石炭ボイラーで湯を沸かしているため、湯が沸いた都度の供給となっている場合がある。湯の供給場所とタイミングは係員によく尋ねたい。
トイレ・洗面台
洋式トイレは電車列車の各編成と客車列車のうち軟席車両と身体障害者用トイレに設置されている。それ以外は和式となる。電車列車には必ずトイレットペーパーが備え付けられているが、客車列車は列車によるのでトイレットペーパーを携帯しておきたい。客車列車の一部はトイレが垂れ流し式であり、駅停車中とその前後は締め切りになるので注意されたい。
洗面台がほとんどの電車列車とすべての客車列車についている。グレードの低い客車列車だと手洗い石鹸が備え付けられていないことがあるので、気になる方は石鹸を用意されたい。
寝台車
寝台車では列車員が情報端末で個々の旅客の着駅を把握しており、夜中でも起こしに来てくれる。深夜早朝の到着でもぐっすり眠ってよい。到着の約15~30分前までに起こしに来てくれる。
寝具はすでにセットされている。下段の枕と掛け布団が上の段に置いてある場合もある。寝台を覆うカーテンは無い(動臥を除く)。
上段・中段の人は、昼間は下段や通路の補助席に座って過ごすことができる。
硬臥車では22時ごろに全車消灯となる。
多くの列車では座席車と寝台車の間は施錠された扉や食堂車で区切られている。施錠された扉は列車員を呼べば開けてもらえる。寝台車から座席車への通り抜けはできるが、逆は寝台車のきっぷの購入記録の呈示が必要である。
電源
電車列車は、多くの型式の車両において旅客が気軽に使える電源(220V/50Hz、以下同じ)が設置されている。
客車列車では、新空調客車列車のほとんどの軟臥車の個室に電源が、多くの硬臥車の通路に少数の電源が、それぞれ設置されている。新空調硬座車では一部の設置にとどまり、普通客車では席種にかかわらずほとんど設置されていない。
着替え
夜行列車で2泊以上することもあるが、着替えるための空間は用意されていない。ただし、客車列車の軟臥車の洗面台は閉め切れるようになっており、ここを使うこともできる。
車内禁煙
電車列車では車内に喫煙できる場所は無く、全車禁煙である。客車列車も全席禁煙だが、デッキに限り喫煙が認められている。
乗務員
電車列車では列車長と2人(16両編成では4人)前後の列車員が乗務している。このほかに列車により鉄道警察官、車内販売やビュッフェの係員、清掃係員が若干名乗務している。
客車列車では列車長と各車両1名の列車員が乗務しており、長距離列車ではその交代要員も乗車している(編成端部の硬臥車が泊まり込みスペースとなっている)。各車両1名の列車員は、扉の開け閉めや車内清掃等を担当する。列車長は、硬座車のうち1両に設けられた列車長辦公席や食堂車にいることが多い。このほかに列車により鉄道警察官、車内販売の係員が若干名乗務している。
安全
中国の列車内は特段の危険はないといってよい。日本にいる間にも行うべき一般的な防犯策をとるべきである。例えば、カメラを含む貴重品を放置したまま席を離れないようにしたい。寝台車で就寝時は、貴重品は身に着けたり枕の下に敷いたりしておきたい。
万一困ったことがあれば、列車員に連絡をとる。ほとんどの列車には鉄道警察官(乗警)が乗り込んでおり、必要な対応をしてくれる。
検札
座席車では時おり検札が行われるのできっぷの情報が記録されている身分証明書類を呈示する。
写真撮影
車窓を撮る分には特に問題ない。車内でほかの旅客や係員が写り込む場合には、人に無断でカメラを向けた際に起こりうる一般的トラブルに留意されたい。
中国鉄道の駅から列車の中まで、起こり得ることをほぼ網羅して紹介しました。私は客車列車の硬座に座って、ビールや水筒で淹れたお茶を飲んだり、ひまわりの種を食べたりしながら車窓を眺めるのが好きです。ときどき相席した人や、巡回する列車員と雑談をすることがあるのも楽しみの一つですね。
この記事を参考にして、充実した鉄道旅を楽しめることを願います!
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◆ Vol.2 ネットも便利!中国鉄道「きっぷ購入法と小ワザ」徹底解説
◆ Vol.3 中国鉄道でどう過ごす?乗車から車内の過ごし方アレコレ
◆ Vol.4 中国の鉄道は本当に安全?データに基づくファクトチェック
◆当連載は、中国時刻研究会より「中国鉄道旅行ガイド」の本文および各種画像の提供を受け、kaeritai.asiaがWeb記事として編集を施したものです。
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画像提供:中国鉄道時刻研究会